ブログ BLOG

blog

「ABC理論」
~仕事での活かし方~

ABC理論は認知行動療法のルーツ

 人は誰でも大なり小なり目標を持ち、良い未来を想像しながら過ごしています。ビジネスで思うように成果が上がらない場面に出会ったときに、「なんて自分は無能なんだ」と落胆する人もいれば、「努力できたことは良かった。次に活かして頑張ろう」とそれをきっかけに意欲的になる方もいます。では、この違いはどこからくるのでしょうか。この答えのひとつのヒントになるのが今回ご紹介するABC理論です。

ABC理論の概念

ABC理論は、アメリカの臨床心理学者であるアルバート・エリスによって提唱された概念で、現代の認知行動療法の基礎となる論理療法の基本原理のひとつです。人の行動や感情は「何が起きたか」ではなく、「どのようにそれを受け取ったか」によって影響されるという考え方に基づいています。すなわち人が経験する苦痛や苦悩などの感情の反応は、外部刺激や出来事そのものではなく、それに対する個人的な信念や思考パターンによって引き起こされるという考えです。

ABC理論とは

ABC理論は、Activating events「できごと」、Belief「信念、認知」、Consequences「結果」の頭文字を取ったものです。起きた「できごと」は同じでも、その「できごと」をどのような「信念、認知」で捉えるかによって、「結果」が変わるという考え方です。まずはそれぞれを簡単にみていきましょう。

「できごと」Activating events

 感情を揺さぶる「できごと」や、行動を引き起こすきっかけとなる「できごと」、またはそれらの状況を指します。例えば、仕事上での失敗や友人とのトラブルがなどがこれにあたります。

「信念、認知」Belief

 「できごと」に直面すると思い浮かぶ、ご本人の「認識や思い込み」のことです。後ほどお伝えする論理療法では合理的な信念と不合理的な信念に分けられます。

「結果」Consequences

 ご本人の「感情的な反応」や、それによりとった「本人の行動」です。喜び、怒り、不安などの感情や、ご本人や周囲を幸せにする行動、破壊的な行動、回避的な行動、などがあります。

ABC理論の具体例

 それでは、誰にでも起こるような例を挙げて、具体的な場面を見ていきましょう。私たちは、人生を歩む上で、日々、目標を持ち、良い未来を想像して生きています。その中で、特にビジネスで「成果をあげたい」という時に起こりうる状況を用いて分かりやすくご説明します。 仕事で成果をあげたいと考えている時に、ご本人の目標や希望とそぐわないできごとが起きた時を、まず仮定しましょう。「できごと(A)」、「信念、認知(B)」、「結果(C)」に細心の注意を払いつつ一緒に見ていきましょう。

「自分は成果をあげられなかったのに、後輩が先に成果をあげた」

まず、この事実がABC理論の中の「できごと(A)」にあたります。 この「できごと」に直面したときに、どのように認識し、どんな考えが浮かぶかが「信念、認知(B)」です。これにより、ご本人に生じる感情や行動が「結果(C)」です。
「後輩に先を越されて、なんて自分は無能なんだ(B)」と失望(C)する方もいるでしょう。これにより自分を責めてしまう結果(C)になる方もいます。なかには「自分の方が成果をあげているのにどうして後輩を評価するんだ(B)」と自分を評価しなかった上司や会社への怒りの感情(C)が強くなる方もいらっしゃるでしょう。この感情反応(C)に影響されて、会社の不満をSNSに投稿するという破壊的な行動(C)にでてしまう場合もあります。また、「自分の方がキャリアが上なのに公正に評価してもらえていない、なんて不公平な世の中だ(B)」と絶望(C)し、仕事への意欲をなくしてしまう(C)人もいるでしょう。一方で、「成果は出なかったが、努力できたことは良かった。次に活かして頑張ろう(B)」とより意欲的に仕事に打ち込むという「結果(C)」を得られる人もいるでしょう。

ABC理論の鍵は「信念、認知」

冒頭でもお伝えした通り、全く同じできごとなのに、それぞれで結果が変わるのは、ABC理論の中でのBにあたる「信念、認知(Belief)」の違いによるものです。 信念や認知とは、私たちができごとに直面すると思い浮かぶ、認識や思い込みのことです。「自分の方が成果をあげているのにどうして後輩を評価するんだ(B)」という信念、認知が思い浮かぶと、SNSに会社の不満を投稿するなどの破壊的な行動(C)に繋がってしまいます。
一方で「成果は出なかったが、努力できたことは良かった(B)」という信念、認知が思い浮かぶと、意欲的に仕事に打ち込む(C)ことに繋がります。 同じできごとに出会っても、信念や認知によって行動が変わるのであれば、ご本人やその周囲が、幸せになる信念や認知を思い浮かべると、結果も良いものにできると気付いた方もいるでしょう。これがABC理論の最も重要な鍵となります。

「不合理な信念」と「合理的な信念」

そして、ここからがその信念や認知(Belief)を上手にコントロールするための具体的な手法の説明になります。
アルバート・エリスは、この信念をさらに深く掘り下げて、「不合理な信念(irrational belief)」と「合理的な信念(rational belief)」に分類しました。そして不合理な信念や思考パターンが、苦悩をもたらす感情の反応を起こすのであれば、合理的な信念を思い浮かべることで、破壊的な行動や苦しい結果を減らすことができるだけでなく、今後起こりうる「できごと」を良い結果に変えることができるとしました。
しかしながら、不合理な信念が浮かんできた場合に、これを払拭するのは極めて難しいと感じて、彼は悩みました。

不合理な信念に反論し効果を実感する

そのような中、ひとつの手法を考案します。この不合理な信念や思考パターンが生じたときに、自分自身で「そうではないんだ」と反論しつつ問い詰めることで、これを合理的なものに置き換えることができるとしました。その際に大切なのが、「反論」を具体的に行い、その「反論」によってもたらされる「効果」を自分自身で実感することです。

反論(Dispute)と効果(Effect)

この反論(Dispute)と効果(Effect)の頭文字とABC理論を合わせて「ABCDE理論」とも言われます。ここからは反論(D)と効果(E)をみていきましょう。 不合理な信念が浮かんできた場合には、この信念に反論することで、自分にとって良い結果をもたらす信念や考え方を模索することが、問題の解消になります。反論については、さらに「現実的な反論」、「論理的な反論」、「実利的な反論」の3つに分類しています。これらの反論から得られる効果を意識しながら柔軟にかつ、適応的に考えてみましょう。

現実的な反論

この信念は果たして現実的なのか、その根拠はどこにあるか、と考えることです。先程のできごとの「後輩に先を越されて、なんて自分は無能なんだ」を例に現実的な反論してみましょう。例えば、「自分が無能だというのは本当だろうか、むしろ後輩が有能だったのではないか」(D)などがあげられます。これにより、「入社時からあいつは確かに有能だった。なにも自分を卑下し責めることはない」という効果(E)を得られます。

論理的な反論

この信念は論理に基づいているか、と考えることです。論理的な反論の例として、「後輩や先輩などのキャリアにかかわらず成果主義で評価されるのはビジネスでは当然だ」(D)などです。これにより、「もっと会社に貢献できるように精力的に取り組んでいこう」という効果(E)を得られます。

実利的な反論

この信念は自分に利益をあたえているか、と考えることです。例えば「自分は無能だと、蔑んでいて何の利益は生まれない」(D)などです。これにより「苦しくなるくらいなら、気持ちを切り替えてよう」と自己肯定感を低下させることなく前向きになれるという効果(E)を得られます。

ABC理論まとめ

誰でも、人生を歩む上で、意にそぐわないできごとや予測困難な「できごと」に遭遇します。そのできごとに直面した時にどうしても不合理な信念にとらわれてしまうことがあります。これに対して現実的な反論、論理的な反論、実利的な反論の3つの視点から反論することで、合理的な信念に切り替えることができます。これにより良い効果をもたらし、その状況に適した捉え方ができてきます。柔軟な思考で適応的な対応ができれば、より良い人生を進めることができたり、自分や周囲を幸せにする行動を強化することができるとされています。これが習慣化すれば健全で適切な行動パターンを確立したり、感情や情緒の安定を確保し、自己受容や自己肯定感を高めることができます。またこの理論を応用することで問題解決能力を高めることにも繋がるとされています。


当院では働く方のメンタルヘルスにも力を入れています。お悩みの方はお気軽にご相談ください。

関連ページ

カテゴリー

WEBで予約 LINEで予約 pagetop
TOP