バーンアウト(燃え尽き症候群)とは
バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、ある物事に高い意欲やモチベーションで熱心に取り組んでいた方のこころが消耗し、疲れ果てて熱意を突然なくしてしまうことです。それ以上の精神的な消耗を防ぐための防衛反応として周囲への配慮ができなくなり、ぞんざいな態度をとってしまうことがあります。努力に見合った成果が得られなかったり、大きな目標を達成したりで次の目標を見失い、何もやる気が起こらなくなることがあります。バーンアウトはもともと心理学での用語なので病名ではありませんが、医学的にはうつ病に近いと考えられています。国際疾病分類ICD-11では雇用や失業における健康に影響を与える要因として分類されています。
バーンアウト(燃え尽き症候群)と
うつ病の違い
バーンアウト(燃え尽き症候群)が進行するうち、うつ病に似た自己を否定する症状が現れる場合があります。
両者の大きな違いは、バーンアウトでは、怒りの感情やイライラ感があらわれて顧客や同僚にぞんざいな態度をとるなど周囲に配慮のない言動がみられます。一方、うつ病では自尊心の低下や自責の念があらわれ自殺念慮を伴うなど矛先はご自身に向う傾向があります。
バーンアウト(燃え尽き症候群)の
原因
バーンアウト(燃え尽き症候群)の最大の原因は、1つのことに集中して頑張りすぎることです。
頑張ること自体は自身の成長や会社の業績などのためにとても大切ですが、限界を超えてご自身を追い込むと、結局は精神的に消耗してしまい、こころがくじけてしまいます。
努力に見合った成果が得られない場合は、努力を続けるのではなく、適度に力を抜いてリラックスすることも意識してみてください。
完璧主義者はバーンアウト(燃え尽き症候群)になりやすい?
責任感が強すぎる方や完璧主義な方はバーンアウト(燃え尽き症候群)になりやすいといわれています。高すぎる目標や基準を自らに課す傾向があり、それに向ってがむしゃらに努力し、達成できたことで目標を見失ったり、逆に達成できないと自己否定に陥ったりと他者からの評価に対して過敏になったりします。
バーンアウト(燃え尽き症候群)の
症状
バーンアウト(燃え尽き症候群)には、次のような症状を伴うことがあります。
- やる気が出ない
- こころが疲れ果てた
- やりがいがなくなった
- 同じ仕事なのに達成感がない
- 仕事の愚痴が増えてきた
- 顧客にぞんざいな態度をとる
- 同僚との不和をわざわざ生み出す
- 朝起きるのがつらい
- 人との接触を避けるようになる
- 仕事に行きたがらない
など
バーンアウト(燃え尽き症候群)前の
兆候(前兆)
バーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こす主な要因は、個人要因と環境要因の2つが挙げられます。
個人要因
バーンアウト(燃え尽き症候群)になりやすい方の特徴は以下の通りです。
- 期待されている以上の成果をあげようと仕事に熱心に励む方
- 顧客や同僚と良い関係を築こうと頑張り続ける方
このように「努力家」や「完璧主義者」の方々は注意が必要です。
高く掲げた理想に到達できず成果があげられなかったり、逆に大きな目標を達成したことで次の目標を見失ったりすることで、バーンアウトの症状が出る恐れがあります。また対人面で常に周囲に気を配り情緒的に消耗しやすい方も注意が必要です。
まずは、ご自身にこれらの特徴がないかを考えてみましょう。
仕事を一生懸命に取り組み、一緒に働く方々との信頼関係を築く努力を続けているのに、急にやる気がなくなり、顧客や同僚の顔を見ることさえつらくなり始めたら注意が必要です。この状態は、感情をコントロールすることがどんどん難しくなる「バーンアウトの入り口」にいることを意味しているかもしれません。
環境要因
現在の職場環境が、過重労働に思える場合は注意が必要です。
残業が多かったり、ノルマが重すぎたりしていないかを考えてみましょう。
業種として注意が必要なものは、接客を伴うサービス業や、医療・介護、教育などの対人サービス、コールセンターやカスタマーサービスです。これらは他者の感情を推し測り、ご自身の振る舞いをコントロールする必要があるため、こころが消耗しやすくなります。またリモートワークが一般的になりつつある中で、仕事とプライベートの切り替えが難しいという環境でも起こりやすくなります。
バーンアウト(燃え尽き症候群)の
治療
バーンアウト(燃え尽き症候群)の治療はうつ病の治療に準じて行われます。
バーンアウトとうつ病は密接に関連しており、これらが同時に生じる場合や、後からうつ状態になる場合があります。働きすぎて疲れているだけだと思っている方も多く、受診までに至らないこともあるかもしれません。うつ病を同時に発症していると治療は長期化する可能性があるため、「うつ病かも」と思った早めの段階で精神科や心療内科を受診することが大切です。主に環境調整として休養を取り入れて、お薬を使った治療を行います。
環境調整
こころの疲労は情緒的なエネルギーの枯渇によって起こります。そのため休養は身体を休めるのと同時に、こころが消耗しにくい環境を用意して回復を目指します。初めは医師の診察で職場のストレスと距離をとるために病休を取り入れることも必要です。ある程度まで回復してくれば、気が合う友人や家族とのだんらんを取るなどの適度な情緒的な交流を設けることで更なる回復を促します。
お薬での治療
主に抗うつ薬を使用し、副作用を確認しながら用量を調整していきます。抗うつ薬は、こころの安定に関わる脳内物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどを増やし、精神的なバランスを整えるためのお薬です。効果が出るまでに時間がかかるため、根気よく治療を続けることが大切です。また不安を伴っている場合や眠れない場合などは、抗不安薬や睡眠薬を症状にあわせて処方します。
心理療法(認知行動療法)
認知行動療法は、物事の捉え方や行動に働きかけることで、気持ちを楽にしてストレスを軽減する心理療法です。性格を変えるのではなく、本来の力を取り戻し社会生活での問題を適切に対処できるようにするための手段です。
「勤勉」「努力家」「完璧主義」という特性は社会生活を送る上では、他者から一定の良い評価を受け社会で重宝される特性のひとつですが、バーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こしやすくもあります。この特性があると人一倍仕事に熱意を持って取り組むことで、こころが消耗しやすくなってしまいます。心理療法ではまずこの特性に気付きを促し、ご自身の問題点を明らかにした上で、物事をどのように捉えて行動していけばよいか共に考えていきます。
バーンアウト(燃え尽き症候群)の
予防
バーンアウト(燃え尽き症候群)になりやすい方は、ご自身に厳しく頑なに働き続ける方が多いのです。しかし目標を達成するためには十分な休息や、時には気分転換も必要です。
意識して休めるよう一週間の予定の中に休息する日もスケジュールに入れてください。また仕事とプライベートを切り離して気分転換できるよう自宅に帰ったらメールのチェックをしないことや、在宅ワークの方ではワークスペースとリビングに仕切りを設けるなども有効です。