うつ病 DEPRESSION

Depression

うつ病とは

うつ病とはこころと体を司る脳内の情報の伝達が上手くいかないことが原因といわれています。ここに機能の障害が起こると、憂うつな気分が続き、何をしていても楽しめない、やる気が起こらないなどのこころの不調と、食欲がない、疲れやすい、眠れないなどの体の不調が現れて日常生活に影響がでます。100人中3~5人の方がうつ病を経験するといわれており、うつ病を含む気分障害の患者数は年々増え続けています。抑うつ状態になるのはうつ病だけではありません。躁うつ病などの初期や不安障害、適応障害などでも起こることがあります。どの病気も共通して早期の治療が大切です。憂うつな気分があると感じたら、早い段階で専門の医師にかかり、適切な治療を行うことが大切です。

うつ病の原因

脳の神経細胞の情報伝達がうまくいかなくなり脳機能に影響がでることが原因のひとつと考えられています。これに遺伝要因、環境要因、身体的な要因、性格や思考の特性などが関連して発症するといわれています。発症の契機として心理的なストレスによるものは広く知られているように、うつ病と診断される方の中で実際に最も多くを占めます。責任感が強く、社会的な秩序を守り、献身的である性格の方に多いとされ、このような場合に働き世代では本人の許容量を超えて業務の負担が増えるなどで身動きがとれなくなってしまうことで発症することがあります。

うつ病になりやすい人

メランコリー親和型気質

メランコリー親和型気質はドイツのテレンバッハによって提唱された気質です。真面目で責任感が強く、秩序を重んじるあまり他者からの評価を気にしすぎる特徴があります。
また、他人の意見を否定するのが苦手で、頼まれるとノーと言えない、規則やルールに従うことに安心感を覚える傾向があり、環境の変化や突発的な出来事にストレスを感じやすいといった傾向もあります。周囲からの信頼が厚く、社会的に重宝される事が多いですが、当人は疲れを溜め込むあまり、うつ病を発症する場合もあります。

執着気質

執着気質は日本の下田光造氏が提唱した気質で、一度湧き上がった感情が長く続くのが特徴です。メランコリー親和型気質と同様に、正義感や責任感が強く、真面目な性格の方に多いとされ、疲れていることに気づかずに頑張りすぎた結果、うつ病を発症することがあります。また、完璧を求め、ご自身や周囲への期待や要求が高くなりがちです。期待や要求が満たされないと深く失望し、うつ病を発症する場合もあります。

うつ病の種類

うつ病はその症状によってさまざまなタイプに分類されます。ここでは6つのタイプについてご説明します。

メランコリー型うつ病

メランコリー型うつ病は、内因性うつ病とも呼ばれ一般的にうつ病の典型的なタイプと考えられています。メランコリー」とは「憂うつになる」「気持ちがふさぐ」という意味で、メランコリー型うつ病の症状には、抑うつ気分、極端な自責感、睡眠障害、食欲不振などがあります。環境要因、性格、遺伝的体質によって引き起こされるといわれています。

非定型うつ病(通称:新型うつ病)

非定型うつ病は「新型うつ病」とも呼ばれ、典型的なうつ病とは症状や特徴が異なる点が多く、周囲が気づきにくい病気です。性格や遺伝的素因が関係していると考えられています。大きな特徴としては、日々の出来事で気分が上がったり下がったりする「気分反応性」です。その他、過食や過眠、感情の過敏化などの症状が現れることもあります。周囲からは「怠け者」「甘やかされている」と思われるかもしれませんが、当人は大きな苦しみを抱えており、自死に繋がってしまう場合もあります。

躁うつ病(双極性障害)

双極性障害は「躁うつ病」とも呼ばれ、うつ病の一種として認識されがちですが、実際にはうつ病とは異なる病気です。極端な気分の高揚と抑うつが交互に現れるのが特徴で、場合によっては希死念慮にとりつかれることもあります。原因は遺伝的なものと考えられています。うつ病とは治療薬が異なるものの、双極性障害によるうつ状態なのか、それともうつ病によるものかを区別するのは難しいため注意する必要があります。

季節型うつ病

季節型うつ病は、特定の季節に発症する非定型うつ病の一種です。秋から冬にかけて発症する冬季うつ病は季節性うつ病の典型ですが、夏や梅雨など他の季節にも発症することがあります。主な原因は日光不足と考えられています。一般的な症状としては、気分の落ち込み、過眠、過食(体重増加)、集中力や思考力の低下などがあります。

産後うつ病

産後うつ病は、産後女性の約10~15%にみられる症状です。産後数ヶ月以内に発症すると考えられてきましたが、産後1年経ってから発症する場合もあることがわかりました。
原因はホルモンバランスの急激な変化や睡眠不足といわれています。気分が落ち込む、不眠になる、集中力や思考力が低下する、ご自分の赤ちゃんに興味がなくなるなどの症状があります。産後数日後に発症し、しばらくすると治まる「マタニティーブルー」とは区別する必要があります。

仮面うつ病

仮面うつ病は、こころではなく身体に症状が現れる病気です。原因は環境因子や遺伝が関係していると考えられています。頭痛、倦怠感、肩こり、腰痛、胃痛などの体の症状は現れるものの、精神症状は見えにくいことから「仮面」と呼ばれています。うつ病とは当人も気づきにくく、放置すると症状が悪化します。

うつ病の初期症状

  • 気分が落ち込む
  • やる気が起こらない
    (家事や仕事が手につかない)
  • 頭の回転がにぶる
  • 以前は楽しめていたことが楽しめなくなった
  • いっそのこと自分が居なくなれれば楽だと感じる
  • 集中力がなくなった
    (簡単なことでもミスが増えた)
  • 必要以上に自分を責めてしまう
  • 食欲がない
    (何を食べてもおいしくない)
  • 眠りが浅い
  • 寝すぎてしまう
  • 朝起きるのがとてもつらく、
    布団から出られない
  • ひどく疲れやすくなった
  • ずっと気分が沈んでいて笑うことが
    できない
  • 死んでしまいたいという気持ちが
    頭から離れない

など

うつ病の人の表情(顔つき)は?

うつ病になると、顔の表情も変わります。うつろで感情がなくなり、全体的に暗い表情になります。顔色が悪く、落ち込んでいるように見えることもあります。大切な方がうつ病に苦しんでいる場合のために、これらの兆候を知っておくと安心です。

うつ病の治療

主に休息をとる事とお薬の力を使った治療を行います。
休息についてはこころと体をしっかりと休めるよう生活環境を整えることが大切です。イメージとしては枯渇したエネルギーを再び蓄えるように焦らずゆっくりと生活することが大切です。診察では発病に至った経緯や背景、生活様式などをお伺いし、原因を整理した上で本人に負担のないよう休息が取れるよう生活環境を整えます。たとえば、働き世代の方の場合ではご本人と相談しつつ、診断書を発行して休職の指示をすることが多くあります。また、復職の際に本人と相談のうえで職場に対して異動や業務負担の軽減などの環境調整を要請することもあります。
また、うつ病になりやすい性格や思考の特徴がないかなどにも注意して診察を進めていき、必要に応じてアドバイスします。
お薬による治療に抵抗がある方もいらっしゃるかと思いますが、症状に応じてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬を少量から使用することができます。抗うつ薬以外では漢方薬や抗不安薬などを使用して、効果を確認しつつ徐々に調整していきます。

高齢者のうつ病(老人性うつ)?

老人性うつは、気分が落ち込むといった精神症状は目立たず、耳鳴り、めまい、ふらつき、手足のしびれなどの自律神経症状や、頭痛、腰痛、胃の不快感などの漠然とした体のあちこちに不快感をおぼえる症状が多くみられるのが特徴です。また、「物忘れが増えた」などの訴えや、心気傾向(検査で特に異常が見つからなくても、ご本人の健康について過度に心配し、悩むこと)の強さや、「心臓が動いていない」「(実際には便が出ているにもかかわらず)便が出ないから食事はとらない」などの心気妄想がみられることも特徴です。他にも高齢者に限ったことではありませんが、実際にお金はあるにも関わらず、全くお金がないと思い込む貧困妄想、ご本人を責める気持ちにとらわれ、ご本人が重大な罪を犯したと信じ込む罪業妄想などの症状が現れることがあります。
老人性うつの場合、ご本人も周囲も「年だから仕方がない」と思い込み、医療機関を受診しなかったり、受診しても痛みや不快感などの体の症状として訴えたりすることが多く、うつ症状が見逃されて重症化してしまうことがあります。高齢者は身体疾患を抱えていることが多く、それらの背景にうつ病が隠れやすいのも老人性うつの特徴です。

老人性うつと認知症の違い

老人性うつと認知症の違い

老人性うつの初期症状は、身体の不調や抑うつ、困惑、焦燥が多く、配偶者の死やご本人の健康問題など特定の出来事がきっかけで発症することがあります。また、朝は調子が悪くても夕方には改善するといった日内変動がみられる場合があります。一方、認知症は発症のきっかけが不明確で、徐々に進行します。初期症状には性格の変化や物忘れがあり、攻撃的になることもあります。老人性うつでは頭の働きが鈍くなったことを自覚し忘れっぽくなったと訴えることができますが、認知症では進行するとその自覚がなく取り繕おうとする傾向があります。

  老人性うつ 認知症
進行の度合い 若々しく活発だった方が、突然何らかのきっかけによって急速に悪化 症状は年単位で進み進行は緩やか
初期症状 心気症状(吐き気、めまい、ふらつき、体の痛みなど)抑うつ、困惑 性格の変化、気分のムラ、物忘れ
日内での変動 朝に最も調子が悪く、夕方なるにつれて良くなっていく傾向がある 明るい時間は穏やかだが、夕方から夜間に不穏が出る場合がある
妄想 心気妄想(体の心配をする妄想) 物盗られ妄想
攻撃性 ないことが多い 攻撃的になる場合がある
忘れ方の特徴 注意力の減退や頭の働きが鈍くなることで物忘れがあるようにみえる(自覚がある) 少し前の記憶を忘れる
(自覚がないことが多い)
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