汗が止まらない方へ
「汗が止まらない」「汗が多い」という症状は不快なだけでなく、時に日常生活に支障をきたします。当院では、汗が止まらず、汗が多い原因について、患者さまの生活環境からのストレスの有無や個々の患者さまに精神的または身体的な疾患がないかなどを診察で判断していきます。
汗が止まらない原因
更年期障害
更年期障害は、主に中年の女性に見られるホルモンバランスの変化(エストロゲンの減少)によって引き起こされる症状です。自律神経のバランスが崩れることで、血管や神経の調整機能が上手く働かなくなり、ホットフラッシュ(顔や体が突然暑くなり、大量の汗をかく)や動悸などの症状がみられます。ホットフラッシュでは熱感が通常は顔や胸から始まりますが、首の後ろや全身に広がることもあります。特に夜間の発汗が見られることもあります。
自律神経失調症
ストレスや環境の変化、生活リズムの乱れなどから交感神経と副交感神経といわれる自律神経のバランスが崩れることでさまざまな症状がでる状態です。自律神経は汗腺や血管、神経なども含めた全身の臓器にくまなく存在し、生体機能を司っています。このバランスが崩れると汗を産み出す汗腺の調節ができなくなり、熱くもないのに汗をかく、寝ている時に大量の汗をかくなどの汗が止まらない原因となることがあります。
パニック障害
パニック障害は、突然の強い恐怖や不安を伴う発作(パニック発作)を特徴とする精神的な病気です。不安が募ると交感神経が過敏になり、死ぬのではないかという恐怖感などの精神的な症状と大量の発汗、動悸、息切れ、めまい、吐き気などの体の症状が現れます。発作には誘因がある場合もありますが、何のきっかけもなく発作が生じ、突然の大量の汗に気付くこともあります。寝ている時に突然、発作に襲われ覚醒して大量の汗に気付く方もいらっしゃいます。
社会、社交不安障害
社会、社交不安障害は、人前にでた時のご自身の発言や行動に対して「恥ずかしい思いをしたらどうしよう」と極度の恐怖や不安を感じる病気です。他人からの評価を過剰に恐れることにより引き起こされます。人前で緊張している時や注目を浴びていると感じる時に、自律神経が活発化し、汗が止まらないという症状を起こします。汗は、手のひらや脇の下に多いとされています。会食の時や人前で字を書く時に限って症状が出る方もいらっしゃいます。
全般性不安障害
全般性不安障害は、長期間にわたって日常生活で起こりうるさまざまなことに対して過度の不安や心配事が続く病気です。家族の病気や天変地異など、心配してもご自身ではどうすることもできない事柄なので、なかなか解決することができず深く悩んでしまいます。これにより日常生活や社会的な活動に支障をきたします。慢性的な不安感によって、自律神経が常に緊張状態になり、汗をかくことに繋がります。汗以外には、常に緊張した状態が続くため、肩こりなどの筋肉のこりや頭痛などの身体的な症状が出ることがあります。
汗が止まらない時の対処法
医療機関の受診
汗が止まらないことにお悩みでしたら当院にご相談ください。汗は自律神経のバランスが乱れた時や、ストレスがかかった時など精神的な要因から生じる場合や、こころの病気の症状のひとつとしても現れます。まずは、これらの精神的な要因がないか、こころの病気がないか診察で明らかにしていきます。
生活習慣の見直し
ストレスと上手く付き合う
ストレスは発汗を増加させる要因となります。ストレスに晒されると人間は交感神経を緊張させて、この状態に向き合おうとするからです。適度なストレスはやりがいを産み出したり、達成感を感じたりするために必要なものでもありますが、過度なストレスには適切な対処が必要です。一日の仕事や家事が終わったら、リラックスする時間を作りましょう。リラクゼーション法として、瞑想、深呼吸、ヨガなどを試すことが効果的です。
食事の改善
辛い食べ物やカフェイン、アルコールは発汗を促進することがあります。これらの摂取を控えることも1つの対策です。特にアルコールは、嗜好品として好きな人にとってはコミュニケーションを円滑にしたり、リフレッシュできたりと良い面もありますが、過度なアルコールを継続して摂取すると依存状態となり、アルコールが抜けていく時に離脱症状として汗をかくことがあります。
水分補給
汗が止まらない時には水分補給をこまめにしましょう。汗をかいて失った水分とミネラルを補うために、麦茶やスポーツドリンクなどを取ることが効果的です。また、適度な水分補給は体温調節に役立ちます。
お薬での治療
抗不安薬
パニック障害、社交不安障害、全般性不安障害が原因で発汗が多い場合には、この治療を行います。これらの病態には生じた不安を抗不安薬で直接緩和させることができます。不安がなくなれば交感神経が過敏になるのを抑えることができ発汗を改善させます。また、自律神経失調症に対しても抗不安薬が有効な場合があります。
抗うつ薬
抗うつ薬と聴くとうつ病の治療に使われる薬という印象が強いですが、実際にはパニック障害、社交不安障害、全般性不安障害などの不安障害や自律神経失調症にも使用されます。抗うつ薬は不安を感じる脳の扁桃体と呼ばれる部位とその周辺に働きかけ、異常な過活動を鎮めます。これにより不安を生じる頻度や不安の強さを減弱します。発汗は不安や緊張で自律神経が活性化されることで生じるため、お薬の効果が出てくると同時に発汗も改善してきます。
漢方薬
漢方薬には体のバランスを整えたり、巡らせたりするという東洋医学の考え方が基礎にあります。副作用が比較的少なく、複数の症状に同時に効果が期待されるため、さまざまな症状が出る更年期障害や自律神経失調症にはまず漢方薬が処方されることも多くあります。
環境調整
適切な衣服の選択
通気性が良く、吸湿性の高い衣服を選ぶことで、体温調節がしやすくなり、発汗を抑えることができます。世界的に有名な国産の大手アパレル会社で市販されているスポーツウェアやインナーは繊維の毛細管現象で汗が吸い上げられて拡散し蒸発するため、冷却効果や速乾効果があるとされています。このような特殊な加工が施されている衣類なども推奨されます。
温度・湿度の調整
暑さを感じる場所で過ごすことを避け、エアコンなどを使用して快適な温度を保つことはもちろんですが、湿度の管理を行うことも発汗を防ぐ助けになります。快適とされる湿度は季節により異なりますが、汗をかく機会が多い夏場は45%から60%といわれています。