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「社交不安障害」
~職場で起こる社交不安を克服する~

職場では社交の場面は多い

働き世代では、会社の懇親会、同僚や上司との雑談、接待での会食などの社交の場面が多くあり、これらが社員の絆を深めたり、ビジネスの機会をもたらしたりします。このため社交場面が得意な方は、働く上で多くのメリットを享受できます。一方で、社交不安障害の方は、これらの場面を苦手とする方が多く、また、プレゼンテーションや、電話対応、大勢の会議での報告などの特定の場面だけで症状が出るパフォーマンス限局型という社交不安障害の方も多くいらっしゃいます。お薬を使った治療も効果がありますが、社交不安障害を、ご本人で克服する方法について認知行動療法の考え方を用いて分かりやすくお伝えします。

社交不安の悪循環に気づく

社交不安障害は性格の問題ではありません。まずは、社交不安障害がどのような原因で病態を作り、不快な不安感情や身体症状を生んでいるのかを知ること、そしてその病態がどのような心理状態から悪循環となるかに気付くことが大切です。ご本人の心理状態に気づくことで、この悪循環を断ち切りましょう。
主に「自動思考」、「不安感情・身体反応」、「注意の偏り」、「安全行動」、「ひとりでの振り返り」、「事前準備やリハーサル」が相互に関連して「否定的な自己イメージ」を作りだしているとされています。否定的な自己イメージが作られると、さらに自動思考、安全行動、ひとりでの振り返りを助長してしまいます。結果として、不安感情・身体反応は強いものになり悪循環を起こします。それでは詳しくみていきましょう。

自動思考

自動思考とは聞きなれない言葉ですが、ある状況に出会ったときに、自然と沸き起こる考え、イメージのことです。社交不安障害では、社交の場で「恥ずかしい思いをするのではないか」などの自動思考が生じます。この自動思考とともに不安感情・身体反応が生じます。

不安感情・身体反応

社交場面で「場にそぐわない発言や行動をしたらどうしよう」などの不安感情が自動思考とともに生じます。不安感情が強くなると動悸や、声の震え、発汗、赤面などの身体反応を生じます。場合によっては気持ちがそわそわして落ち着かない状況が続いたり、緊張から頭が真っ白になったりすることもあります。この不安感情や身体反応はご本人にとって非常に不快な感情の変化と身体の反応であるため、社交の場でご本人がこれを過度に意識せざるを得ない状況になります。

注意の偏り

不安感情や身体反応を感じて自覚することで、社交の場面において自分自身に注意が向いてしまいます。たとえば「わ、ドキドキしてきた。やばい、声も震えて汗も出てきた」「周りからどう思われているのだろう」などです。このように自分自身に注意が向いている状態では、社交場面で上手く振る舞えなくなるのは想像するに難くないでしょう。さらに、自分自身に向いている注意が、他者から本人を見た現実の反応に気づくのを難しくしているとされています。すなわち、他者から見ても本来はよそよそしく映らないにもかかわらず、ご本人はそう思うことができません。これが否定的な自己イメージに繋がります。

否定的な自己イメージ

不安感情と身体反応から、ご本人のイメージを作り上げるため「こんなに不安を感じていてドキドキしているから、きっと他人から見ても不安そうに見えているに違いない」などと否定的な自分自身のイメージを作り上げてしまいます。すなわち、ご本人の不安感情と身体反応、自己イメージ、「恥ずかしい思いをしたらどうしよう」という自動思考から、自分が他者にどう映っているのかをイメージします。 これが、現実の姿よりも過大に否定的な自己イメージを形成することになります。

安全行動

さらに、苦手な社交場面や恐れている最悪の事態を防ごうとして、社交場面を避けたり、社交場面で自分自身についての話題を提供しなかったりするなどの安全行動を続けると、かえって不安が続いてしまい、社交場面で「恥ずかしい思いをしたらどうしよう」という自動思考が強くなるとされています。また、安全行動をしなければ起こりえなかっただろう最悪の事態が「実際には起こらなかった」と気付く機会を失ってしまいます。さらに、ご本人が取った安全行動について他者は違和感をもち、ますますご本人を窮地に追い込むとされています。安全行動により生じるこの悪循環に気づくことが大切です。ただ、病態を理解せずに安全行動を辞めようと、やみくもに苦手な場面に立ち向かっても、かえって症状が悪化する場合もあるため注意が必要です。

ひとりでの振り返り

通常の社交場面では、ご本人がどのくらい上手く振舞えたかや、他者から見てどうだったか、ということについて、はっきりとした評価を受けることはほとんどありません。しかしながら、ご本人は社交の場が終わった後でひとりで振り返ってしまい、社交の場で感じた不安感情や身体反応をもとに、ネガティブに捉えてしまいます。これにより否定的な自己イメージはさらに強化され、将来の社交の場での不安感情はさらに高まることになります。また、否定的な自己イメージが強まると、実際にはなかったはずの誤った記憶を作ってしまい、社交場面でのご本人の振る舞いが失敗だったと間違った記憶が構築されることがあります。社交場面の後で、ご本人ひとりでその場面を振り返ることは一切行わないことが大切です。そもそも社交場面での失敗、成功の評価を他者ではなく、ご本人自身で評価してしまっていることに気づくことが大切です。

事前準備やリハーサル

社交場面の前に自宅などでひとりで行うリハーサルや事前準備は、もちろん役立つ場合もありますが、過度なリハーサルを続けることで、とても堅苦しいセリフとなってしまったり、ご本人のリハーサルの台本に従おうとしてしまいます。これにより会話や立ち振る舞いの柔軟性が乏しくなり、自然に振る舞えなくなってしまいます。そもそも、社交場面では千差万別の性格の方々が集まり、流動性のある会話や振舞いとなるため、ご本人のリハーサルは役立たないことが多いとされています。基本的には社交場面に入る前にリハーサルは行わないことが大切です。

職場で起こる社交不安 まとめ

働き世代では、懇親会や接待の会食など、社交の場面は比較的多いとされています。社交場面で苦手意識をもたず、自然に振舞えるようになると、社員同士の絆を深め仕事を進めやすくなったり、円滑な振舞いからビジネスの機会をもたらしたりします。社交不安障害を克服するために、まず病態を理解することが心理的な負担を軽減し、有効に働きます。社交不安障害と診断されていなくとも、社交の場面で「場にそぐわないことをしたらどうしよう」と不安や緊張がある方は、これを助長させないためにも、今回の内容を参考にしてみてください。
また、プレゼンテーションや電話対応、大勢の会議での報告などの特定の場面で症状がでるパフォーマンス限局型の社交不安障害について、事前準備やリハーサルは必要な場合もありますが、基本的な病態は同じです。
社交不安障害では、気付かない間に否定的な自己イメージを作ってしまい、それがさらに悪循環を起こしています。ご本人の脅威や心配は、他者からの評価ではなく、実は自分の中にあることに気づくことが大切です。この気づきを得て、まずはこの悪循環を断ち切りましょう。

当院では働く方のメンタルヘルスにも力を入れています。お悩みの方はお気軽にご相談ください。

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