食欲がわかない方へ
通常は胃が空っぽになると脳の食べたいと感じる部位が働いて食欲がわきます。「食べていないにもかかわらず食欲がわかない」などの食欲の低下は何らかの理由で脳が食欲を感じにくくなっている状態です。食欲が低下する原因はさまざまですが、ストレスからの不安、抑うつ状態などの、こころの健康が影響して「食欲がわかない」という症状がでていることもあります。食欲不振を放っておくと低栄養状態になることがあり、心身ともに更に不調をきたす可能性があります。
以下は食欲がわかなくなる代表的な、こころの病気になります。「食欲がわかない」だけでなく「食欲が止まらない」方もお早めに当院へご相談ください。
食欲がわかない原因
うつ病
うつ病の主な症状は、気分の落ち込み、興味や喜びの喪失であり、しばしば身体的症状も伴います。最も一般的な症状の1つに食欲不振があります。うつ病では、脳の機能異常から食欲がわかないという症状がでます。食べることへの興味や意欲が低下し、食べ物を見ても食べたいという気持ちにならないこともあります。また食べること自体に負担を感じてしまうこともあります。うつ病による食欲不振は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスの乱れが原因と考えられ、脳の食欲をつかさどる部分に影響を及ぼし、食欲の減退を引き起こします。
躁うつ病(双極性障害)
躁うつ病は、気分が異常に高揚する時期(躁状態)と、ひどく落ち込む時期(うつ状態)を交互に繰り返すことが特徴です。これらの状態によって食欲は大きく変動します。
躁状態ではエネルギーが増し、食べたいという欲求が強くなりますが、注意が散漫し食事を取り忘れたり、食生活のリズムが乱れたりします。場合によっては過食が起こることもあります。
躁うつ病のうつ状態では、うつ病と同様の原因で食欲不振がよく起こります。食事への興味がなくなり、食べたいという気持ちにならないことがあります。
睡眠障害(不眠症)
不眠症は、寝つきが悪い、途中で目が覚める、早朝に目が覚めるといった睡眠障害を指しますが、睡眠障害が食欲にも影響を与えます。睡眠不足は体内のホルモンバランスを乱し、特に食欲を増進させるグレリンや満腹感を伝えるレプチンなどの食欲に関係するホルモンに影響を与えます。また、睡眠不足が自律神経系に影響を与え、消化機能が低下することで胃腸の不快感や食欲不振を起こすこともあります。
適応障害(適応反応症)
適応障害は、特定のストレスに対する過度な反応として現れ、心身のバランスを崩すことに繋がります。また、心理的なストレスは自律神経に影響を与え、交感神経が過剰に活発となると、胃腸の働きが抑制され、消化機能の低下、胃の不快感を引き起こします。またストレス下では単純に食欲不振がでることもありますが、食事を摂ることへの興味や意欲の低下から食欲がわかなくなることもあります。適応障害を放っておくとうつ病と同じ状態となり、脳内の神経伝達物質であるセロトニンのバランスが崩れ、気分が落ち込み、食事を楽しむ気持ちが減退することもあります。
不規則な生活リズム、食生活の乱れ
食事や間食の時間が不規則になると、どうしても食欲が出ないことがあります。間食する際には適切な量を適切な時間にとることが大切です。間食は1日当たり200kcalにおさめるようにしましょう。食事の前に食べてしまうと食欲がわかなくなる方は、デザートとして食直後に間食を取り入れることをお勧めします。また昼夜逆転の生活パターンや睡眠不足などの不規則な生活リズムが重なり、自律神経が乱れ、胃腸機能が低下して食欲不振になる場合もあります。
お腹が空いているのに
食欲がない時に良い食事
食欲がない時は、消化の良い食べ物や飲み物から必要な栄養素を摂ってみましょう。
たとえば、おかゆ、うどん、そうめん、スープ、茶碗蒸し、豆腐、プリン、ゼリーなどは、のどごしがよく、あっさりとしていて、味や香りも控えめであるためお勧めです。コンビニやドラッグストアで簡単に手に入ります。
食欲が止まらないのも病気?
食欲がわかない時だけでなく、食欲が止まらない時も病気が隠れているかもしれません。考えられる病気としては、以下の病気があります。気になることがありましたらお気軽にご相談ください。
適応障害(適応反応症)
適応障害は、ストレスに順応しようとする過程で生じる身体的、精神的な症状により、日常生活に支障が出た場合に診断されます。食欲に関しては低下することが一般的ですが、なかにはストレスがかかった時にそれを発散するために過食という食行動に走ってしまう方がいます。
うつ病
うつ病では、食欲が低下することが多いですが、逆に過食になるタイプのうつ病もあり、医学的には非定型うつ病といわれます。非定型うつ病は、過食の他には、気分反応性を特徴とします。たとえば、会社にいる時には憂うつな気分はありますが、本人が好きなことをする時には元気が出てきて、楽しいことがあると気分も上がるような状態です。また、体が鉛のように重く感じることや、過眠の症状なども通常のうつ病とは異なり特徴的な症状とされています。
躁うつ病(双極性障害)
双極性障害は気分の大きな変動が特徴で、「躁状態」と「うつ状態」が交互に現れる病気です。躁状態では精神的なエネルギー状態が高まります。意欲の増加や食欲の増進がみられ、活動レベルが高まることに連動して、さらに食欲が増すことがあります。この状態では食生活の抑制が効かず、過食に至る場合もあります。また食事以外にも抑制が効かず衝動的な行動もしばしばみられるようになります。