適応障害(適応反応症) ADJUSTMENT DISORDER

Adjustment disorder

適応障害(適応反応症)とは

適応障害(適応反応症)とは 現代社会は技術の進歩で利便性が高まる一方でさまざまな問題を抱えています。社会生活におけるストレスが原因となる代表的な病気が適応障害です。ストレスなく日々を過ごしている方はごく稀で、精神科・心療内科の診療に携わるなかで最も多く診断される病気といっても過言ではありません。たとえば働き世代の年齢では職場内での上司、同僚との関係性の不和やハラスメントによるもの、業務負担の増加などからの過労によるストレスが原因となります。これにより心身のバランスが崩れて、憂うつな気分、不安感、頭痛、イライラ感、不眠などのこころの症状と頭痛、動悸、悪心、めまいなどの症状により生活に影響が及んだ状態です。症状だけをみると、正常な人にも一般的に現れる現象ですので、見過ごしてしまう適応障害の方々も多くいらっしゃいます。しかしながらこの状態を対処することなく放っておくと、うつ病などの重篤な病状に移行する可能性があるため注意が必要です。

適応障害(適応反応症)は
ストレス性障害のひとつ?

適応障害はストレス性障害の一種で、ストレスによる気分の落ち込み、意欲低下、不眠などの症状が現れます。ストレス因子に対する不適応反応であるため、ストレス因子が取り除かれると症状は速やかに改善しますが、ストレスが続くと適応障害も持続すると考えられています。DSM-5(診断基準)では、適応障害の症状はストレス因子の発生から3ヶ月以内に現れ、ストレス因子の消失後6ヶ月以内に改善するとされています。
適応障害の診断には、統合失調症や気分障害(うつ病、躁うつ病)、不安障害などが確認された場合は適用されません。

適応障害(適応反応症)の原因

診断基準に明確なストレス因子があることとされているように、心理的なストレスが原因となります。反対にストレス因子が特定されなければ適応障害の診断とはなりません。職場や学校、家庭など社会生活の中での人間関係のストレスや、ハラスメント、育児のストレス、配偶者や家族の死去などの冠婚葬祭にまつわるもの、自然災害や事故などの予期できないものなどさまざまです。失恋や推しの結婚など他人からみて共感することが難しいようなものでも本人からすると大きなストレスとなることがあります。また悲しいことやつらいことだけではなく、待ち望んだ新築への引越し、期待していた昇進、第一志望の大学への進学などの喜ばしい環境の変化も場合によっては本人にとってストレスとなることがあります。

パワハラで適応障害(適応反応症)に
なることもある?

社会人の適応障害の典型的なパターンは、パワーハラスメントや長時間労働などによる過度のストレスに耐えざるを得ず、これにより体調を崩すことです。
徐々に気分が落ち込み、不眠症に悩まされるようになり、イライラが抑えられずにおかしいと気づいて受診する方も多くなっています。
新しい部署に馴染めなかったり、上司から厳しい叱責を頻繁に受けて、朝に出勤するために自宅を出たにもかかわらず、職場に行けなくなったりすることもあります。
最初は軽いうつ状態であっても、徐々に重症化することがあるため注意が必要です。

適応障害(適応反応症)の症状

  • 仕事や学校に行くのがつらい
  • 憂うつな気分
    (何をしても楽しめなくなった)
  • 気持ちが重くてやる気が出ない
  • 不安感
    (頭の中が不安でいっぱいになる)
  • ちょっとしたことでもイライラしてしまう
  • ちょっとしたことで涙が出る
  • 食欲がなくなり食べることがつらい
  • 不眠(夜、考え事が止まらなくなり眠れない)
  • 人と会うのが怖い
  • 身体がだるくて何もできない
  • 情緒不安定
  • 頭痛
  • 動悸
  • 悪心
  • めまい

など

適応障害(適応反応症)の人も
人前では明るい?

適応障害の方も、人前では明るいことがあります。
適応障害の方がつらさを隠し、人前では明るく振る舞うことはよくあります。適応障害の症状は、強い心理的ストレスに適応しようとする過程での心理的な反応として発症します。

土日(休日)だけ元気なのは
適応障害(適応反応症)?

土日(休日)だけ元気なのは適応障害(適応反応症)?仕事のストレスが原因で適応障害になった場合、仕事中は不調でも休日は元気ということがあります。一方、適応障害であっても、休日も仕事のことを考えてしまい、平日も休日も不調が変わらないこともあります。ですので、土日(休日)だけ元気なのは適応障害とは一概には言えません。

適応障害(適応反応症)に
なりやすい人

適応障害はストレスの多い環境にいれば誰でも発症する可能性があります。特定の方だけが発症する病気ではありませんが、適応障害を発症しやすい方の特徴は以下の通りです。

ストレスに弱い

ストレスに弱い、ストレス耐性が低い方の場合、小さなことで気に病んだり、腹を立てたりしがちです。
その結果、日常的に落ち込むことが多くなり、精神的に疲れやすくなります。この状態が続くと、適応障害を発症する可能性があります。
他人の言葉に左右されやすい、それによりイライラしやすいと自覚している方は注意が必要です。

責任感が強い

責任感が強い方は、物事を全部1人で最後までやり遂げようとしがちであり、周囲に頼ることができない傾向があります。
その結果、1人で悩んだり、ご自身の能力以上の仕事を抱え込んだりして、過度のストレスを溜め込みがちになります。
責任感が強い方は真面目なため、上司から厳しく叱責されると「自分が悪い」と思い詰めてしまうことがあり、注意が必要です。

頼まれると断れない

頼まれごとを断れない方は、気づかないうちに過剰なストレスを抱えている可能性があります。仮に嫌なことを頼まれても、「自分が我慢すれば円満に解決できる」と考えていたり、無理難題をいわれても「仕方がない」と断れなかったりします。その結果、さらに色々なことを頼まれるようになり、精神を病むほど追い込まれてしまう可能性も高まります。

他者を優先する

ご自身のことより他者を優先する方は、たとえご自身が無理をしていても、他人の気持ちを考えて行動する傾向があります。
周囲を気遣い、悩みを相談しないため、つらい気持ちを伝えることができず、結果として悩みを1人で抱え込み、適応障害を発症することに繋がる可能性があります。

適応障害(適応反応症)の診断基準

適応障害はICD10とDSM5の基準に基づいて診断されます。具体的な基準として、以下の4つが挙げられます。

  • ストレスの原因が明らかで、ストレスを感じてから3ヶ月以内に症状が現れる
  • ストレスが強い苦痛を引き起こすか、日常生活に支障をきたす
  • 他の精神疾患や死別反応(愛する人との死別による喪失)ではない
  • ストレスの原因が取り除かれると症状が改善し、6ヶ月以内に症状が落ち着く

適応障害の特徴は、ストレスの原因が明確で、その原因が取り除かれると回復することです。したがって、「ストレスの原因はわからないが、心身ともに疲れている」という方は、適応障害ではなく、別の病気である可能性が高いと言えます。

適応障害の治療

原因となっている心理的なストレス因子を診察で明確にします。そのストレスを軽減したり、ストレスから離れたりして心理的に回復させることが大切です。これと同時に症状にあわせて漢方薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬などお薬の力を使って治療を行います。
職場での人間関係やハラスメント、業務負担の増加による過労などが原因であれば、本人と相談のうえで診断書を発行し休職の指示をすることが多くあります。当院では即日に休職の診断書を発行しますので、初診日の当日から医師の指示で休職を取り入れることができます。この症状で会社を休んで大丈夫だろうかと考える方も多く見受けられますが、悩みの中で受診していただいた最後の砦として精神科・心療内科はあります。しっかりと療養を取っていただいた方が症状はより早期に改善しますので心配はいりません。会社にとっても病状のある方が重大なプロジェクトを任され、病状があるがゆえに職務を適切に遂行できなかった場合にリスクを負うことにも繋がってしまう可能性があります。まずは治療に専念し、復職してから会社に貢献する方法を共に考えていきましょう。
ストレスとなる要因から離れるなどの環境調整が適切に整えば、病状の経過は一般的に良好です。復職の際には休職前と同じ環境に戻ると同じ症状がでることがありますので、本人が主体的にストレスに適応できるよう職場での環境調整を行うことが一般的です。具体的には本人と相談したうえで当院の診断書を用いて、職場に対して業務負担の軽減や異動など職場で対応できる範囲での環境調整を要請します。

適応障害で休職する場合
どれくらい休む?

適応障害の標準的な休職期間は、少なくとも数ヶ月、理想的には3ヶ月から6ヶ月が目安とされています。初めて医師が発行する診断書には「1ヶ月間の病休を要する」と記載されていることが多いですが、1ヶ月以上も先の病状を見通すことが難しいためこのような記載となっています。通常は更新が可能ですのでご心配いりません。1ヶ月後の状態によっては、「更に1ヶ月間、病休の継続を要する」という診断書を再度書くこともあります。

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