「仕事でのストレス」
~職業性ストレスの考え方 DCSモデル~
職業性ストレス(仕事でのストレス)とは
転職の経験がある方の中には、同じ業種や職種でも、ある会社ではストレスを抱えて仕事をせざるを得ない方が多くいる一方で、ある会社ではストレスなく生き生きと仕事をしている人が多いことに気付くことがあるでしょう。この違いはどこからくるのでしょうか。 今回は、仕事のストレスを高める条件が「どのような職場環境」によるものかに焦点を当てて、ストレスモデルを引用してお伝えします。家庭内や友人関係などのプライベートでのストレスと区別して、職場で受けるストレスを「職業性ストレス」といいます。この職業性ストレスについて理解を深めることで、仕事のストレスに悩んでいる方がどのように仕事をマネージメントすればよいか、また、これから社内でより良い職場づくりを目指している方がどのような点に留意して職場環境を改善すればよいかの参考になります。さらにはメンタルヘルスも含めたストレス関連疾病の低減だけでなく、ワークエンゲージメントの強化により会社の業績向上に寄与する考え方にもつながります。
DCSモデルとは
今回は職業性ストレスモデルのひとつであるDCSモデルを用いて職業性ストレスをどのように評価するかについてご説明します。DCSモデルはDemand-Control-Support modelの頭文字をとったもので、日本語にすると要求度、コントロール(自由度)、支援モデルになります。
DCSモデルの由来と現代での活用
1980年代に職業性ストレスについて研究していたロバート・カラセック氏が提唱した仕事の要求度とコントロールモデル(Job Demand-Control model)にジョンソン氏とホール氏がサポート(Support)の評価項目を追加して提唱しました。ストレスを規定する指標として「仕事の要求度」、「仕事の自由度」、「仕事の支援」の3つをとりあげています。これらの指標の程度を組み合わせて、職業性ストレスについての評価をします。厚生労働省が、一定規模以上の事業所に対して実施を義務付けている「職業性ストレス簡易調査票」の質問項目はこのDCSモデルを参考に作られています。
それではDCSモデルの3つの評価項目である「仕事の要求度」、「仕事の自由度」、「仕事の支援」について詳しくみていきましょう。
「仕事の要求度」
仕事の繁忙度や、業務上での困難感、業務自体のレベルの高さです。例えば、仕事の量がご本人の処理能力よりも多い場合には、そもそも時間内に業務を終えることができません。また、毎週のように納期に追われて、期日が差し迫ることの多い性質のものや、ご本人の知識や技能では解決することができないような難しいものです。要求度が高まれば、仕事でのストレスは高まることは理解しやすいと思います。一方で、職業性ストレスに対処するために業務の要求度を単純に下げれば良い訳ではないとされています。仕事をすることで労働者が得られる対価は、単に条件や給与ではなく、ご本人のやりがいを満たすものや会社や上司からの評価、社会への貢献がどの程度なされるかなども含まれるからです。要求度が下がれば、業務のやりがいや充実感はなくなってきてしまうでしょう。
「仕事の自由度」
仕事に対するご本人の裁量や意思決定の自由度を指します。また、本人の技能を活用することで業務をコントロールできる尺度も含まれます。たとえば、ご本人の裁量で決定できる範囲が広い業務であれば、仕事の優先順位をご本人の意思で自由に組み立てることができます。また、ご本人が秀でている能力を用いて、業務を有利に進めていくことができれば自由度は広がります。逆に、業務についてご本人で意思決定を反映することが難しく、仕事の進め方や優先順位をコントロールすることが難しければ、ストレスは高まります。たとえば、会社の経営者が、従業員と同じ仕事を同じ分量だけこなしたとしても、裁量権の有無の違いにより、受けるストレスは全く異なるということです。また、ご本人の技能や得意分野を活かせない環境では自由度が下がり、負担を感じやすくなります。
「仕事の支援」
主に同僚や上司からの支援です。たとえば、ご本人にはまだ身についていない専門的知識やスキルをサポートしてくれる上司がチーム内にいたり、業務をこなすうえで必要な情報を提供してくれる同僚や他職種のスタッフがいたりする場合には、業務についての実務的な支援を受けることができるため、この評価項目は高い水準であると言えるでしょう。直接的に業務にかかわらないことでも、楽しく仕事ができる雰囲気を作ってくれる人員が近くにいる環境や、プライベートな相談にのってくれる同僚がいるなどの精神的な支援がある職場もこれに含まれます。また、ご本人に新たな気付きや視点を与えてくれるようなサポート体制があるとモチベーションの向上にもつながり、この評価項目は高いとされます。反対に、教育担当者やメンター制度のない職場に、経験のない新入社員が入社して、その後のサポートも少ない職場であると、ストレス負荷は高くなるということです。
職業性ストレスが高いとは?
DCSモデルでは「仕事の要求度」、「仕事の自由度」、「仕事の支援」の3つの指標から、職業性ストレスの高さが決まるとされています。 「仕事の要求度」が高く、「仕事上での自由度や裁量」が低く、かつ「上司や同僚などからの支援」が少ない場合が最も職業性ストレスが高い状態であり、身体的な健康障害やメンタルヘルスの問題が発生しやすくなるというものです。逆に「仕事の要求度」が低く、「仕事上の自由度や裁量」が高く、「周囲からのサポート」が得られやすい状況では、ストレスを受けにくいとされています。このようにDCSモデルでは職業性ストレスは単純に仕事の量や難しさなどの要求度だけではなく、ご本人の裁量権や、周囲のサポートによっても影響されるということが、職業性ストレスを理解するうえで重要なポイントとなります。
職業性ストレス簡易調査票
一定規模以上の事業所に対して厚生労働省が実施を義務付けている「職業性ストレス簡易調査票」の質問項目はこのDCSモデルを参考に作られています。就業人口の約半数がこのストレス調査の該当者となっているため、その内容についてピンときた方もいるのではないでしょうか。今後、厚生労働省はこの調査を規模の小さな事業所にも義務づける方針です。事業者は承諾なしに個人の結果を閲覧することはできませんが、集団分析という形で職場環境の改善に役立てることを目的としています。
職業性ストレス(仕事でのストレス)まとめ
業務上でのストレスに悩んでいる方は、今回お伝えしたDCSモデルの理解を深めることで、どのような切り口から対処すれば、ストレス負荷を減らすことができるかのヒントとなるでしょう。仕事の要求度を下げることは多くの場合、現実的には難しいとされています。ですので、うまく周囲のサポートを取り込んだり、ご本人自身の裁量や自由度の幅を持たせて業務をマネージメントすることで、その糸口が見えてきます。 また、これから社内でより良い職場づくりを目指そうとしている方にとっては、このストレスモデルを理解することで、どのように職場の環境を改善すればよいかのひとつの参考にしてください。メンタルヘルスも含めたストレス関連疾病の低減だけでなく、ワークエンゲージメントを強化する基盤ともなり会社の業績向上に寄与する考え方につながるとされています。
当院では働く方のメンタルヘルスにも力を入れています。職場でのストレスでお悩みの方はお気軽にご相談ください。