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「職場でのメンタルヘルス対策」
~その仕組みについて~

こころの健康とは

みなさんは「こころの健康」と聞いてどのようなことを想像しますか。悩みが全くないことと考える方もいれば、気持ちがとても安定していることと想像する方もいるでしょう。
WHO(世界保健機関)によると、こころの健康は「人生のストレスに対処しながら、自らの能力を発揮し、よく学び、良く働き、コミュニティにも貢献できるような、精神的に満たされた状態」と定義しています。
ご本人のパフォーマンスを発揮して、仕事を介して社会に貢献し、精神的に満たされた状態となるためには、職場でのメンタルヘルスケアは大切です。今回は、厚生労働省の指針を用いて職場のメンタルヘルス対策がどのような仕組みとなっているかお伝えします。

職場でのメンタルヘルス対策

職場でのメンタルヘルス不調は近年増加の一途をたどっています。特に2024年の職場でのメンタルヘルス不調による労働災害の認定件数は883件で過去最大となっており、うち未遂を含む自殺の件数は79件で前年比で12件の増加となっています。
その原因として「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」「業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」「セクシュアルハラスメントを受けた」の順に多くなっています。
厚生労働省もこの状況を重く受け止めており、労働災害防止計画の中でメンタルヘルス対策の目標を次のように掲げています。

労働災害防止計画におけるメンタルヘルス対策の目標

  • メンタルヘルス対策に取り組む会社の割合を80%以上にする
  • 労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を50%以上にする
  • 自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み又はストレスがあるとする労働者の割合を50%未満にする

職場でのメンタルヘルスケア

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は職場でのメンタルヘルスケアが上手く実施されるよう、その方法について具体的に厚生労働省が定めたものです。今回はこの指針について詳しくお伝えします。同指針ではメンタルヘルスケアの基本的な考え方は、職場でのメンタルヘルスケアの推進を職員に表明し、衛生委員会で計画を立て、ストレスチェック制度の実施方法などの取り決めをすることとしています。その中で次の予防が円滑になされることが必要としています。

労働者の心の健康の保持増進のための指針 1次予防~3次予防

  • 1次予防:ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する
  • 2次予防:メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う
  • 3次予防:メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行う


また、こころの健康問題は個人差が大きく状況を把握するのが難しいこと、個人情報の保護により安心してメンタルヘルスケアに参加できるようにすること、人事・労務管理との連携が必要なこと、プライベートの生活でのストレス要因、性格などの個人要因の影響を受けること、などに留意してメンタルヘルスケアを勧めることとされています。
1次予防~3次予防を行う上で、さらに「セルフケア」「ラインによるケア」「職場内産業保健スタッフ等によるケア」「職場外資源によるケア」の4つのケアが行われることが重要とされています。それぞれ詳しくみていきましょう。

セルフケア

会社は職員に対して、次に示すセルフケアが行えるように支援をすることが大切としています。また、部長などの管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、セルフケアの対象として管理監督者も含めることとしています。

  • ストレスチェックを活用したストレスへの気づき
  • ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
  • ストレスの対処

ラインによるケア

ここでいうラインケアとは、直属の上司や、教育担当者、管理監督者などの、ご本人と直線(ライン)上で繋がる方たちのサポートです。「いつもと違う」職員に早く気付くことが大切とされています。それまで遅刻をしたことがなかった職員が遅刻を繰り返したり、無断欠勤をしたりするなどです。速やかな気付きのためには、日頃から職員に関心を持って接して、いつもの行動や人間関係の様子について知っておくことが必要です。

いつもと違う職員の様子

  • 普段にはない遅刻や早退、(無断)欠勤が増えた
  • 残業や休日出勤が不釣り合いに増える
  • 仕事の能率が悪くなっている
  • 報告、相談、連絡がなくなる
  • 職場での会話がなくなる
  • ミスが目立つ
  • 表情に活気がない

など

ラインケアで「いつもと違う」職員の様子に気づいたら、これが病気によるメンタルヘルス不調なのかを確認しなければなりません。産業医に相談する仕組みづくりや、精神科•心療内科の専門医への受診を促すことが必要です。「いつもと違う」職員への気づきは早期発見として大切なことです。

職場内産業保健スタッフによるケア

職場に配置されている産業保健スタッフは、メンタルヘルスの計画の実施に当たり、次の役割を担います。

  • 具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
  • 個人の健康情報の取扱い
  • 事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
  • 職場復帰における支援

など

職場外資源によるケア

精神科•心療内科の専門医が所属する地域のメンタルクリニックや、地域の産業保健総合支援センターなどがあります。

  • 情報提供や助言を受けるなど、サービスの活用
  • ネットワークの形成
  • メンタルヘルス不調の治療
  • 職場復帰における支援

職員のメンタルヘルスを守ることが義務づけられている

労働安全衛生法では50人以上の職員の職場ごとに「衛生委員会」の設置を義務づけています。メンタルヘルス不調の方が増加していることを受けて、この対策の重要性が増していることから衛生委員会でメンタルヘルスの保持増進を図る対策を取り決めるよう定めています。その他、職員のメンタルヘルスの状態を職場が把握したことにより、ご本人に不利益な取り扱いが行われることがないようにするための対策や、個人情報の保護に関すること、メンタルヘルス対策を職員に周知することなどが定められています。 さらに、ストレスチェック制度の導入により衛生委員会はこの実施について取り決めて、あらかじめ職員に対して周知するとしています。
また「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は次の労働安全衛生法に基づいて策定されています。

労働安全衛生法

第18条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。
第69条 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めなければならない。

職場復帰における支援

メンタルヘルス不調により休業した職員がスムーズに職場復帰し、その後も勤務を続けることができるようにするため、衛生委員会で話し合い、職場復帰の支援プログラムを作ることが定められています。たとえば、復職の直後から通常の業務を行うのではなく、午前中だけ出勤するなどのリハビリ出社の期間をもうけたり、職場外の図書館で数週間過ごす期間を作ったりする制度を取り入れている会社もあります。
職業性のストレスによるメンタルヘルス不調の回復には、回復期に少しずつストレス負荷をかけていくことが肝要です。これにより、再発を防ぐことができるだけでなく、ご本人の能力を発揮できる状態をスムーズに作り出し、円滑に業務の効率を上げることにもつながります。

ストレスチェック制度

労働安全衛生法では、心理的な負担の程度を把握するためのストレスチェック検査を義務付けています。職員が50人未満の職場では努力義務ですが、厚生労働省は今後この小規模の職場にも義務づける方針です。
ストレスへの気付きを促しセルフケアに役立てるという目的があります。また、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげることで、1次予防のメンタルヘルス不調の未然防止を目的としています。
結果は直接ご本人に渡されます。ご本人の同意なく職場に結果を提供することは禁止されています。また、検査結果が高ストレス者であり、面接指導を受ける必要があるとされた方からの申出があった場合に医師による面接指導を実施します。集団分析の結果を用いた職場環境の改善は会社の努力義務ですが、1 次予防を勧めるために大切なものです。衛生委員会や産業医がこれを勧めていきます。

メンタルヘルス不調を理由とした不利益な取扱いの防止

メンタルヘルスケアで把握した情報は、その方の健康の確保に必要な範囲で利用されるべきものです。その範囲を超えて会社が職員に対して不利益な取扱いを行うことはあってはなりません。具体的には、次に当たることは会社は行ってはなりません。

  • 解雇すること
  • 期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと
  • 退職勧奨を行うこと
  • 不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換または役職の変更を命じること
  • その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること

小規模の職場におけるメンタルヘルスケアの取組み

職員が50人未満の小規模の職場においても、同様にメンタルヘルスケア実施の表明をし、セルフケア、ラインケアを中心として、取組みを進めることが望ましいとされています。今後、厚生労働省は小規模の職場でもストレスチェック制度を義務付ける方針です。また、職場で産業保健スタッフが確保できない場合は、メンタルヘルス推進担当者を選任して、地域の産業保健総合支援センター等の支援を活用することが有効となります。

職場でのメンタルヘルス対策 まとめ

今回は厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」をもちいて職場のメンタルヘルスケアがどのような仕組みになっているかをお伝えしました。業務に追われる中でストレスを抱え、心身の不調をきたしている方は無理をして頑張り続けず、まずは直属の上司や部長などの管理監督者にメンタルヘルス不調について相談してみてはいかがでしょうか。職員が50人以上の職場では衛生委員会の設置が義務付けられており、上司への相談をきっかけに適切にメンタルヘルスケアの配慮がなされる仕組みがあります。この指針では個人情報保護の厳正な配慮がなされており、メンタルヘルス不調を理由とした不利益な取り扱いを受けてしまう心配はありません。
管理監督者の方には、今一度職場のメンタルヘルスケアについて会社の規定を確認し、不調の兆しのある職員を適切にケアするとともに、復職した職員に対してその心情に寄り添いつつ、支援して頂ければと思います。

当院では働く方のメンタルヘルスにも力を入れています。職場でのストレスでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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