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「こころが疲れた」
~こころが疲れたときの対処法~

こころが疲れた人は増えている?

日本は疲労大国といわれ、身体的な疲労をかかえている方や、こころが疲れたと感じる方は多くなっています。厚生労働省の患者調査によると、こころの病気の方は、2005年から2020年の15年で2倍以上に増えていています。なかでも、うつ病などの気分障害、適応障害などのストレス関連障害などが多くを占めます。

こころが疲れた人が増えている理由

それではなぜ、こころが疲れてしまい、こころの病気を抱える人がこれほど増えているのでしょうか。 その理由はさまざまなことが示唆されていますが、「情報量の多さ」、「職場環境の変化」、「地域コミュニティの希薄化」などのライフスタイルの変化や、「経済的な負担」、「メンタルヘルスへの意識の高まり」などがあげられます。

情報量の多さ

技術の進化やサービスの多様性により、日常生活は急速に変化しつつあります。インターネット、スマートフォン、SNS、生成AIの利用は非常に便利ですが、一方で私たちのこころの健康に少なからず負担をかけています。かつてと比べて処理しなければならない情報が増加していますが、脳の処理能力は、はるか昔に現在のものに進化してから、大きく変化していません。そのため現代の情報量に対応するには脳に負担がかかり、こころが疲れる原因となってしいます。多くの情報にさらされ、常にそれを処理しさまざまな判断をせまられます。この過程の中で感情はゆさぶられ、情動は不安定になり、こころの疲れとしてあらわれます。 なかでもSNSは、他者と比較してしまうことになりがちです。たとえば、誰かの華やかな生活、輝かしい成功を目にすると、自分が取り残されているように感じることもあるでしょう。これにより自己評価が低下し、不安や焦り、気分の落ち込みなどを生じることがあります。また、SNSで繋がりたくない方と繋がってしまう場合もあり、こころが疲れる原因となることがあります。

職場環境の変化

職場における年功序列の制度は過去のものになりつつあり、個人の評価を大切にする成果主義、能力主義を重視する会社が増えています。これにより効率や結果を求める志向が強まり、業務に対するプレッシャーも高まっています。2023年の厚生労働省の調査結果によると、現在の仕事で「強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は80%以上にのぼることが分かりました。職場での競争が激しくなると、常に緊張感がある環境に身をおかなくてはならないばかりか、人間関係は居心地の良いものではなく、こころが疲れる原因になってしまいます。

地域コミュニティの希薄化

かつては地域や家庭のつながりが強く、困ったときに頼れる存在が身近にいました。しかし、都市への人口集中や核家族化が進んだ現在では、地域のつながりや家族や親戚の絆(きずな)が薄れ、孤独感を感じやすい人が増えています。これが不安や焦りを助長する原因にもなっています。こころが疲れたときに、それを癒してくれる社会的な繋がりのある相手がいないことで、悩みが深くなることがあります。

経済的な負担

他の先進国と同じように、日本でもここ数年で急激に物価が上昇しています。食費や住居費、住居費などの生活費全般が高騰しているにもかかわらず、わが国では労働者の収入が増加しにくい現状があります。過去の歴史の中でも、経済的な悩みが増えてくると、こころが疲れる方が多くなる傾向があることが分かっています。

メンタルヘルスへの意識の高まり

2000年代初頭から国が主体となり、うつ病の啓発活動が行われました。かつては、つらい事があれば気分が落ち込むのは当たり前だと考える方たちが多くいらっしゃいましたが、こころの病気の啓発活動で国民の意識が変化し、こころが疲れたときに医療機関を受診する方が増えたことがあげられます。 また、アメリカ精神医学会から出版された「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」の改訂で医療従事者に、うつ病などのこころの病気の概念が広がり、それにより診断される数が増えたこともあげられます。

こころが疲れたときの対処法

まずはセルフケアを中心に、リラックスできる方法や、こころの疲れを解消できる手段をとってみましょう。

セルフケアをおこなう

こころが疲れたときに、「ご本人がリラックスできるのはどういう時か」、「こころの疲れを解消できているのは何をしている時か」、を振り返ってみましょう。メモ帳や白紙の紙にそれらを書き出してみることも良いとされています。書き出してみることで、抱えている悩みと心理的な距離を取りつつ、客観的にとらえることができます。これにより悩んでいることへの不安や焦りがやわらいできます。同時にそれまでは思いつかなかった選択肢やアイディアにご本人で気付けるようになります。これは書いた文章を読み直すことでも得られる効果です。セルフケアですので他人に見せる必要はありません。ですので気軽に書き出してみましょう。

体のサインにも注意する

こころが疲れたときに同時に、体のサインがでたら、体をいたわってあげましょう。たとえば、胃腸が弱っているようであれば、温かくて消化に良いものを食べて、休めてあげましょう。緊張で体がこわばっていたら、ストレッチ運動をしたり、ゆっくりと湯船につかったり、こわばりを解きほぐしてください。また、全身の疲労がたまっているなら、夜更かしを控えて、早めに寝ることも必要です。こころの疲れと同時に、体が疲れていると感じる方はこちらもご覧ください。

運動習慣を取り入れる

運動することで否定的な気持ちを発散させ、こころと体をリラックスする効果があります。また、神経のバランスを整えて睡眠と覚醒のリズムを整える作用があります。軽いランニングや、早足でのウォーキングなどで有酸素運動を取り入れることが特に効果的です。一度に無理して頑張らず、短い時間から継続して取り組むことが大切です。無理をせず1日30分くらいを目安に運動習慣を取り入れてみましょう。

相談できる相手をもつ

家族や友達、同僚や上司などご本人の周囲にはさまざまな人たちがいます。あなたは決して一人ではありません。困ったときに手を差し伸べてくれる方が必ずいます。普段は踏み込んだ内容の話をしないような間柄の方でも、ご本人からの相談がきっかけで、お互いの内面をより深く知ることもあるでしょう。周囲とのきずなを深めていくことで、孤独感を解消することにもつながります。

こころが疲れたときの症状

こころが疲れたときに出る症状は、様々なものがありますが、代表的な症状を次に示しています。ご自身でできる対処法を行っても、こころの疲れが解消されずに、次の症状が当てはまる場合には精神科・心療内科の受診をおすすめいたします。

  • 気持ちが沈みがちになる
  • すぐにイライラする
  • 物事に集中できない
  • 本や新聞などの内容が頭に入ってこない
  • 肩こりがひどい
  • 音やにおいに敏感になる
  • 動悸がする
  • 息切れしやすい(呼吸が浅い)
  • 胃や腹部に不快感が続く
  • 食事時間が短くなった
  • 食事の量が変わった(増えた、減った)
  • 寝つきが悪い
  • 睡眠中に何度も目が覚める

こころが疲れたときに考えられる病気

不眠症

適切に睡眠が取れないために、日中に倦怠感、集中力の低下、意欲の減退、食思不振などの不調が出現する病気です。入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などの分類があります。これらの症状が一定期間続いているときに診断されます。日本人の30〜40%が何らかの不眠症状を有しており、女性に多いことが知られています。加齢とともに不眠症は増加し、60歳以上では半数以上の方で認められます。

適応障害(適応反応症)

ご本人にとって明らかなストレス因子があり、このストレスに順応しようとする過程のなかで、憂うつな気分、不安感、イライラ感、不眠などのこころの症状と、頭痛、めまい、悪心、動悸などの体の症状が出現します。これらの症状により、日常生活に影響が出たときに診断されます。ストレス関連障害のひとつに分類されていることから分かるように、ストレス因子が特定されなければこの診断にはなりません。

うつ病

憂うつな気分を中心として、集中力が続かず、以前楽しめていたことが楽しめなくなり、やる気が湧かず、頭の回転が鈍くなります。食欲がわかず、睡眠にも影響が出てきます。周囲に申し訳ないことをしてしまったと過度に自分で自分を責めて、自殺してしまう方もいらっしゃいます。原因はさまざまなものが言われていますが、なかでも脳の神経細胞が適切に情報を送れなくなることが有力であるとされています。特にうつ病の初期にはこころが疲れたと感じる方は多くいます。

躁うつ病(双極性障害)

躁状態と、うつ状態を周期的に繰り返します。躁状態では気分が高まり、考えが次々にわいてお喋りになったり、活動的になったりします。軽い躁状態では、ご本人はむしろ調子が良いと感じていることが多く、医療機関の受診までは至らないことが多いですが、うつ状態では気分が落ち込み、やる気が起こらず、何をしても楽しくなくなりご本人も自覚します。こころが疲れたと感じるのもうつ状態のときです。躁状態でエネルギーを使い果たして、その後、うつ状態に入ってしまうため、お薬での治療でこの気分の波を安定させることが大切になります。

不安障害(パニック障害、社会•社交不安障害、全般性不安障害)

心配性、几帳面、感受性が高いなどの性格の方が多く、周囲への配慮ができる方たちに多いとされています。この性格や素質がゆえに職場での人間関係や友達などの集団にいると、ご本人の考えや行動を無意識のうちに抑えつけてしまい気疲れをしてしまう傾向があります。日常生活の中で気持ちがすり減り、こころが疲れたと感じてしまうことが多くなりがちです。

バーンアウト(燃え尽き症候群)

高い志(こころざし)や旺盛な意欲を持っていた方が、熱心に業務などの目標に取り組む過程で、徐々にこころが消耗し、疲れ果てて熱意をなくしてしまう状態です。もともと心理学で使われていた言葉ですので、この病名で診断されることはありません。国際疾病分類ICD-11では雇用や失業における健康に影響を与える要因として分類されています。病態としてはうつ病に近いと言われています。

「こころが疲れた」まとめ

厚生労働省の調査によるとこころの病気で医療機関を受診する方は増えています。現代の時代背景や、生活スタイルの変化、こころの病気への認識の高まりなどが、その背景にあります。こころが疲れたと感じる方は、まずご自身でできるセルフケアを通じて、体のサインにも注意しつつ、リラックスできる手段をとってみましょう。

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